漫画マイベスト 2023

2023年も数多くの漫画と出会えた1年になりました。今まで読めていなかった旧作もいくつか読むことができましたが、中でも沙村広明『無限の住人』、鬼頭莫宏『なるたる』などを読むことで、自分はやはりアフタヌーンの連載作品のことが大好きなのだと再認識で…

『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』古川知宏監督 最後のセリフ @新文芸坐 20221203

2022年12月3日、池袋の新文芸坐で行なわれた「新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL アバンギャルドアニメの最先端 劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト 」というイベントでは、上映後に古川知宏監督と『アニメスタイル』の小黒祐一郎編集長のトークコーナーが…

瞬間 (『瓜を破る』第6巻 感想)

『瓜を破(わ)る』は板倉梓による漫画作品である。芳文社発刊の漫画雑誌「週刊漫画TIMES」にて連載されており、つい先日、TVドラマ化が発表されたばかりだ。そして本日10月16日には単行本の最新8巻が発売となった。 先月のある夜、うまく寝つけず未読のこの漫…

悼むこと、乗り越えること (『すずめの戸締まり』感想)

「みみずくんは地底に住んでいます。巨大なみみずです。腹を立てると地震を起こします」とかえるくんは言った。「そして今みみずくんはひどく腹を立てています」 村上春樹「かえるくん、東京を救う」 『すずめの戸締まり』を見てまず驚いたのは、新海誠が地…

ミツメ 「エスパー」

この一曲さえリリースしたなら、それだけでそのバンドには十分な存在意義があったと思わせられる、完璧な音楽が稀にある。 2020年に惜しくも解散をしてしまったシャムキャッツの「GIRL AT THE BUS STOP」や、山田尚子監督作『リズと青い鳥』の主題歌にもなっ…

あれから6年経つんですって

『君の名は。』をIMAXで鑑賞しました。私は公開当時に映画館で2回見たのみで、その後はBlu-rayも手に入れましたが、結局それも今までに一度も再生することはありませんでした。だから今回の鑑賞は実に6年ぶりのことです。 これは見る前からなんとなく分かっ…

サイコキラー通信 Vol.1 5月のあれこれ

2022年5月はたくさんの作品に触れることができました。少しずつ感想を書き残してみます。 1.ゴールデンカムイ (5月8日) 無料公開期間が5月8日まで延長されたことで、それなら読んでみようかという気になりました。ヤングジャンプの連載作品を読むこと自体と…

少女と森 (『タコピーの原罪』上 感想)

一コマ目、薄暗く木々が生い茂る森の入り口のようなその空間には藤子・F・不二雄『ドラえもん』の空き地よろしく、三つの土管が横積みされており、その中の一つからは怪しげな触手が外へと伸び出ている。土管の中に潜む何者かに対し、戸惑いながらも「ねえ …

全3巻で完結する漫画を紹介

現在の個人的な気分で「これだけは読んでください」と推薦したくなる完結済み漫画を紹介します。すべて全3巻の作品で統一しました。これというのも、全3巻という長さに私自身、強い愛着があるからです。何日もかけて読まなくてはいけないというほどではなく…

音のない世界で(『ドライブ・マイ・カー 』感想)

濱口竜介監督の作品は、これまでに何度も動く乗り物を印象的に撮影してきたことが思い返されます。2010年の『THE DEPTHS』でも、2012年の『親密さ』でも、並走した2台の乗り物が徐々に引き離されていくその様子をカメラがじっくりと捉えて終幕を迎えました。…

「脚本の人そこまで考えてないと思うよ」を考える。

(図1)『月刊少女野崎くん』6巻134pより 椿いづみによる4コマ漫画『月刊少女野崎くん』を読んだことがなくとも、この一コマだけなら知っているという人は多いのではないでしょうか(図1)。 これはヒロインの千代が、演劇部のお芝居で役をどのように演じればよ…

死なない少女(『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』感想)

1. 序盤では一切明かされることがなかった過去の出来事や登場キャラクターたちの馴れ初めを、物語の後半にまるで堰を切ったように立て続けに開示していき、独特なエモーションを獲得することに成功しているのは、この作品の監督である古川知宏の、さらに師匠…

空白を想像すること (『ブランクスペース』感想)

熊倉献作品との出会いは2017年1月、当時新刊だった『春と盆暗』が面陳されていた実家近くの書店だったと記憶しています。 実際に書店でこの単行本を見かけるまで作者である熊倉さんのことは恥ずかしながらまったく知りませんでしたが、無数の道路標識が突き…

青春時代の通過儀礼 ( 『リズと青い鳥』 感想 )

2010年、『映画 けいおん!』で劇場監督としてデビューを果たした山田尚子は一昨年、ついに興行収入20億円の大台を超えるヒット作『映画 聲の形』を生み出した。 耳に障害を持つ少女と、かつて少女を虐めていた少年とのやり直しを描いたこの青春物語は、第一…