『負けヒロインが多すぎる!』というライトノベルをこの一ヶ月くらいの間で既刊8巻すべて読みました。「このライトノベルがすごい」という権威ある賞では今年の映えある第1位に輝いた作品です。
元はと言えば、昨年の夏クールに放送されたTVアニメでこの作品のことを知ったのが始まりでした。アニメーションは『リコリス・リコイル』とか『ソードアート・オンライン』とかで有名なA-1 Picturesの制作で、非常にウェルメイドな映像に好感を持ち、すっかり夢中になって毎週の放送を楽しみにしていました。
タイトルの通り、恋に敗北したヒロイン達が複数人登場して、その全員がめちゃくちゃなまでに"萌え"という振る舞いを持って、代わる代わる主人公の男子学生・温水くんに思わせぶりな言動を見せたり、時に頬を赤らめてみたり、ツンとしたり、デレっとしたりするのを見て、作品の受け手である我々が否応なくにやにやとほくそ笑みながら視聴できるようになっている、厳然たるラブコメディの作品ですが(温水くんというのがこの手の主人公にはよくありがちなとても鈍感なタイプの男で、彼には女の子達からのそういった好意なのかなんなのかがイマイチ判然としない微妙なニュアンスの矢印がいくつ向かってきても、自分が今まさにラブコメの渦中にいるなんてことはつゆとも感じ取ったりしないある種の潔さがあります)、私はこの中のメインヒロインである八奈見杏菜ちゃんという青髪で大飯食らいの女の子のことが、アニメを見ていた去年の夏の時点でとても好きになっていました。
TVアニメも続編の制作が決まってはいるものの、放送がいつになるのかは現時点でまだ分からないので、とりあえず先に原作でも読んでみようかなと思い、この度、手に取った次第です。
本作は私にとって久しぶりに読むライトノベル作品ではありましたが、その独特な、まさにライトノベルとしか言いようのない、学園生活を描いているというのにあまりに非現実的で甘ったるい作品雰囲気にはどこか懐かしいものを感じました。「はいはい、こういうノリね。昔も今もラノベは変わらんね」と臭し半分のテンションで最初読み進めてはいたものの、正直途中からはそれすらも愛おしくなってきて、逆張り的なそんな態度もほとんど薄れて、純粋に作品を楽しんでいる自分がそこにはいました。描かれるエピソードによっては、大げさでなく寝食を忘れるほどに引き込まれるものもありました。
しかし主人公の温水くんが地の文で見せる、会話相手への軽いツッコミ(ほとんどすべての会話が温水くんのこれで幕を閉じます)や、軽妙な風に取り交わされる登場人物らのセリフの応酬とかに対しては、こういう小気味よく仕上げようとしているラノベ仕草って今となって読んでみるとちょっとキツいんだよなあと思う部分があったり、他の人の感想を読んでいて散見される「文章力が高い」という評価にあまりうまく共感できなかったりで、作品の全部が全部、手放しで素晴らしいと感じたわけではありませんでした。
ただ、最新8巻の終盤の展開には、特に心をつかまれるものがありました。心をつかまれた、というか心にぽっかり穴が空いてしまうような虚脱感が読後にやや発生しました。こういう症状が自分の身の上にあらわれるのは個人的にいい作品の証拠だとも思っています。たまにそういう作品があります。
八奈見杏菜ちゃんのことをアニメで大好きになって、彼女のまだ見ぬ言動を追うという目的を第一に読み始めた原作小説でしたが、8巻では、自分のその杏菜ちゃんが好きという一強の気持ちがだいぶ揺れることになったというか。要するに彼女とは別なヒロインの、見せ場となるような素敵なシーンがあって、杏菜ちゃんだけでなくこっちの子も相当いいなあと思ってしまったわけです。TVアニメだけ見ていたんじゃ自分がその子にこんないい意味でかき乱されることになるなんてまったく想像もできませんでしたし、そのサプライズが心底嬉しくも感じられました。
ずっと現状維持で進んでいくような、だらだらとした甘ったるさが感じられるシリーズでしたが(もちろんそこがこの作品のいいところだとも感じています)、この最新8巻の最後の、今後の展開の動きを期待させるような引きはたいへん見事でした。永遠に変わることなく続く日常など存在し得ないことを、私はずいぶん前に『けいおん!!』の第20話を見たときから知っていたはずでしたが、『負けヒロインが多すぎる!』のこの突然の展開にもそんな当たり前のことをまた改めて思い知らされることとなりました。日常って、変化し続けるから日常なんですよね。知っていましたか。
続きが発刊されたらきっと読みます。おもしろかったです。
で、そんな感じで昨年の夏にアニメを見たくらいから、かわいいかわいいと言っては自前のiPadでちょこちょこと八奈見杏菜ちゃんを趣味で模写したりしていたのですが、そういったお絵描きの活動が高じてか、色々な縁や巡り合わせもあって9月のコミティア153に漫画の描き手として参加することがほぼほぼ決定しました。
厳密に言えば6月のコミティア152にも委託販売という形で自分が描いた2pの漫画が掲載された合同誌を頒布していたのですが、今回は紛れもなく、自分達のサークルとして申し込んでの出場となります。9月に出す予定のものも合同誌ではありますが、おそらく前回よりは長めの漫画を描くことになります。
コミティアにはこれまでずっと買い手、客として参加していて、これからもそれはさすがに変わらないだろうと思っていたので(だって漫画なんか描いたことなかったし)、まさか自分がサークル参加することになるとは、本当に人生は何が起こるか分からないものだなと、自分のことながらしみじみと感じています。
前回のコミティア152で私が描いた漫画は、自死で最愛の恋人を失った若い女性が前を向いて生きるため、亡くなった恋人に届かぬ一通の手紙を書くという内容のものでした。初めて漫画を描いていく中で、うまくいかないことがとても多かったし、自分のすべてをこれで出し切れたかと言われるともちろんそんなこともなく、次回に大きな課題を残す作品となりました。そしてその次回というのが、来る9月7日のコミティア153となるわけです。
コミティアに参加される予定の皆様、ぜひ当日は私達「グラビア・スケッチ・チャンネル」のスペースまで遊びに来てください。私はなるべく今の自分のすべてを出しきれる、そんな作品が描けるようにと現在奮闘しています。『負けヒロインが多すぎる!』の既刊も全巻を読み、正しくラブコメをインストールできているこの脳の状態で、自分の原稿に全力で向き合うつもりです。描く作品がラブコメになるかどうかも全然決まっていませんが。本当に大丈夫だろうか。乞うご期待。