『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』古川知宏監督 最後のセリフ @新文芸坐 20221203

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 2022年12月3日、池袋の新文芸坐で行なわれた「新文芸坐×アニメスタイルSPECIAL アバンギャルドアニメの最先端 劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト 」というイベントでは、上映後に古川知宏監督と『アニメスタイル』の小黒祐一郎編集長のトークコーナーが設けられました。50分ほどのトークの最後に古川監督が語った内容が非常に印象的だったので書き起こします。以下、書き起こし。

 

──そろそろトークも終了の時間ですが、最後にお客さんに伝えたいことはありますか。

 

この映画*1ができた理由が、公開から一年半経って自分の中で朧げながらちょっと見えてきたんですけど、それはなんなのかって言うと、かなり突っ込んだ話にはなっちゃうんですけど。まず、TVシリーズの企画段階では、最初は謎の敵が出てきてそれを倒すっていう分かりやすい企画だったんですよ。

でもそれだとキャラクターを立てるのがちょっと難しいなって思って、だからキャラクター同士のぶつかり合いに変えさせてくださいってお願いしたんです。そしたら今度は軍服ベースの格好良い衣装にしてほしいと言われて。

それって結局、僕の経歴からしたら視聴者から「ウテナ*2」って言われてしまうことが100%分かってたんですよ。その設定を拒否することは可能だったんですけど、でも僕はそれをやらなかった。キャラクターを立てるために、あの制作期間とキネマシトラスの当時の現場力でやれることを選んだんですよね。僕は腹を括ったんですよ。どうせ何やったって「ウテナだ」って言われるんだろって。みんなインターネットで検索して出た答えを見てそれに飛びつくんだろうし、それならもういいやって思って。外野の意見を気にするよりかもフィルムの強度を上げようと。

幾原さんも昔言ってたんですよ。「俺もウテナのとき、ベルばらだって言われたんだよね*3」って。だけど結局、幾原さんたちは『ウテナ』をやり切ったわけじゃないですか。だからそんなことを気にするよりかは、いただいた企画で、その時のスケジュールと予算と舞台との連動性の中で自分がどうやってキャラクターを大事にすることができるかってことを考えたんです。自分のプライドよりかも作品を選んだんですよね。

それでその後、「このコンテンツでこうしてほしい」みたいな枷が劇場版で外れたときに、次は"巨大な鉄の塊"を画面に出してみたいって思ったんですよ。その巨大な鉄の塊のイメージを膨らませていくと、キャラクターを次の舞台に行かせるための"電車"だ!って思って。でもこれ今度は「ピングドラム*4」って言われるだろうなと思って。絶対言われると思って。

実はスタッフからもすでに「古川さんテレビシリーズのときはウテナって言われて、劇場版のときはピングドラムって言われたけど、それでいいの」って訊かれたことがあるんですよ。でも「ピングドラムだから電車出したわけじゃないし、俺」とは思っていて。キャラクターを次の舞台に、次の駅に届けたいって思ったから、俺は電車を選んだんであって、検索してヒットする気持ちのいい答えとしての「幾原さん」っていう単語に飛びつく人たちに対する自分の自意識よりかも、作品の強度の方が大事だろって思ったんです。腹括ったんですよね。何言われたっていいやって。そしたら、電車がどんどん加速していったんですよね。そしたらこんな映画ができたんです。あのね皆さん、腹括るといいですよ(笑)。

なんか誰にどう思われるとかじゃなくて、そこで腹括ることができたから、それこそ、なんつったらいいんですかね… 自分が憧れた監督たちもみんな一度はどこかで腹括ったんだろうなって思ってて、なんか恥ずかしいなとか、そう言われるだろうなと思っていても、その速度を出して、キャストとスタッフにその電車のスピードを上げてもらって、皆さんのことも別の駅に届けられたなって思っていて。だから今は本当によかったなって思っています。今後も新しい駅を目指したいんで、皆さん、よろしくお願いいたします。

(書き起こし終わり)

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